出会いもあれば、別れもあるのが隔離病棟。
前にも書いたが1週間に1人のペースで亡くなっていく。

話は3日前に遡る。
車椅子に乗ったボケた爺さんが必死に共用の公衆電話で電話しようとしている。
右手に持っているのはもちろん「テレカ
・・・ではなくて、「1万円札」!!!

俺「じいさん。10円かテレカじゃなきゃ入らんよ。」
じいさん「う~。○×☆●☆」
可愛そうに。喋るのもままなっていない。
こんな状態で誰に電話するというのだ。
俺は自分のテレカを黙って彼に差し出した。
その時のじいさんの笑顔は忘れる事はないだろう。
右手の1万円はもちろん俺に!・・・くれる訳ない。
まあ、500円なんていらんけど。。

そして昨日は俺の誕生日。
俺は朝から看護婦に誕生日をアピールしていた。
その話が耳に入ったのだろうか・・
突然じいさんが俺に白い袋をくれた。。
俺「なんすか!これ!?・・ありがとうございます!今日最初のプレゼントですよ!」
じいさんは相変わらず何言ってるか分からなかったけど、嬉しそうだった。

(テレカのお礼か~。しかも俺の誕生日。
 親切をして良かったわい!)
なんて思いながら、俺の頭は「わらしべ長者の話」でいっぱいだった。

そして、俺は期待に胸を膨らましながら、部屋で白い袋を開けた。。

・・・鶏肉のから揚げ!!!(たぶん胸肉)

は!?これだけ?
ダイヤでも中に埋まっていないかと、食ってみたが・・
やはり。。鶏肉!!しかも1個!
とんだわらしべ長者だ。。
俺はじいさんの謎のプレゼントに頭が壊れそうだった。




そして今日。。。

そのじいさんは息を引き取った・・・

出会いと別れはしょうがない。
ご愁傷様です。
しかし。
悲しさが心を埋め尽くす前にひとつの疑問がひっかかった。

なぜ鶏肉?
鶏肉は遺言?
「達者でなチキン野郎」・・?
「俺の代わりに羽ばたけよ!」・・?
「九連宝橙は1ソウ待ちじゃ!!」・・!!
テレカ。チキン。テレカ。チキン・・・?

・・・パン!!!